鬼滅の刃 第96話「何度生まれ変わっても(前編)」感想


 

落莫とした夜に、悲しき声はこだまする――

落莫。 聞きなれない単語ですが、もの寂しいという意味のようです。
前回、前々回までの激闘の後、静けさの漂う街にこだまする鬼の兄妹は何を語るのでしょうか。

 


もう消える直前だと言うのに罵り合っていますね……。
「お前さえいなけりゃなあ!」と言われ泣いている堕姫を見ると心が痛みます。
いやこの兄妹がどれだけの人を殺し、食べてきたのかを考えると何とも言えませんが
せめてこの二人だけは最後まで一心同体でいて欲しいという気持ちが……。

 

そこに炭治郎が寄り添います。

 

「味方してくれる人なんていない、だからせめて二人だけは」
「お互いを罵り合ったらだめだ」

炭治郎が言いたいことは全て言ってくれました。
この優しさこそまさしく炭治郎の一番の強さだと思います。

 


その言葉に妓夫太郎は炭治郎を睨みつけ、堕姫はどっか行けと怒鳴りつけます。
先程までケンカしていたにも関わらず「何とかしてよお兄ちゃん!」と叫びます。

堕姫は頸を斬られる直前も「何とかしてお兄ちゃん!」と叫んでいました。(参照)
鬼としての在り方を考えてもホントはお互いを大事に思い、必要に思っていることが分かりますね。

 


そしてそのまま堕姫、もとい梅は消滅してしまいました。
妓夫太郎も妹の本名を叫び、口元まで消滅してしまったのでこれが最後の言葉でしょう。

罵り合ったまま消えるのではなく、
最後の言葉がお互いを呼び合う言葉だったのはほんの少しだけ救いだったように思います。

そしてここから妓夫太郎による過去回想です。

 

 

『羅生門河岸』
「遊郭の最下層で生まれた俺たち、生きているだけで飯代がかかるので迷惑千万」
「生まれてくる前に何度も殺されそうになり、生まれてからも邪魔でしかなく何度も殺されそうになり」
「それでも俺は生き延びた、枯れ枝のような弱い体だったが必死で生きていた」

壮絶な妓夫太郎の幼少期、生まれた頃から殺されそうになるというのはどれほどのものなのでしょうか……。
想像を絶する状況を経験しそれでもなお生き延びている辺り妓夫太郎のしぶとさが垣間見えますね。
あと虫けらボンクラのろまの腑抜け、役立たずという妓夫太郎が炭治郎に向けていた言葉が
過去に妓夫太郎自身が言われていたことだったのはグサッと来ました。

 


「鼠や虫を食っていた」
「遊び道具は客が忘れて帰った鎌だった」

「俺の中で何かが変わり始めたのは梅が生まれてからだ」

鎌までの荒んだ雰囲気からの梅誕生の背景は何ともむず痒い気持ちになりますね。

 

成長するまでに様々な困難があったであろうことは想像に難くないのですが
それでも13歳になるまでは兄に守られ育てられたのでしょう。

美しい妹の存在が妓夫太郎の劣等感を吹き飛ばし、
二人の人生が良い方へ加速していくかのように思った矢先。

梅が侍の目玉を簪で突き、報復として生きたまま焼かれました。
(少年漫画でする仕打ちじゃない……)

俺はいなかった。

ここまでするか!?
鬼滅の刃作中の身分制度がどれほどのものかは分かりませんが
遊女が侍に逆らった報復で生きたまま焼かれるって……そんなことあるのか……。
梅の美貌へのやっかみが含まれているのか、侍のプライドが高かったのか。

 

取り立てるというフレーズも何度も妓夫太郎自身が口にしていました。
妓夫太郎という役職名をそのまま名前としてつけられただけあってこだわりが強いですね。

慟哭する妓夫太郎は梅に目を突かれた侍に背後から斬り付けられ、
梅が所属していた遊郭の女将に厄介払いされたことを知ります。

しかしそこで素直に殺されるような人間ではありません。
地獄のような幼少期を生き抜いた男の恨み節。

「お前いい着物だなあ」
「清潔で肌艶もいい、たらふく飯を食って綺麗な布団で寝てんだなあ」
「生まれた時からそうなんだろう、雨風凌げる家で暮らして、いいいなああああ!」

「そんな奴が目玉一個失くしたぐらいでギャアギャアピーピーと」

 

「騒ぐんじゃねえ」

一閃。
人間の時から侍程度はなんの問題もなくあしらえる強さを持っていたんですね。
喧嘩が強いってレベルではない……。

梅を抱えて歩き出す妓夫太郎に雪までもが容赦なく降り積もります。
とうとう倒れ込み「“禍福は糾える縄の如し”だろ順番に来いよ」と毒を吐くことしか
できない妓夫太郎の元に一人の男が声をかけます。

 

「どうしたどうした 可哀想に」

場に似つかわしくない軽い態度で現れたのは先代上弦の陸!
可哀想にのコマでは口元に血がついていないのに次のコマでは血が……。
人を喰いながら会話しているな!!

この頭から血をかぶったようなデザインの元上弦の陸が今はどうなっているのか分かりませんが、
妓夫太郎たちに殺されて交代したという展開が勿体無いくらい謎の魅力を感じます。

堕姫が「今はまだ陸だけどこれからもっと強くなって…」と言っていたので
数字の昇格は前例としてありそうです。
この血をかぶったようなデザインの鬼(呼び方が定まらない)が現在も上弦でいてほしいです。

 

 

「さぁお前らは鬼となり俺のように、十二鬼月…上弦へと上がって来れるかな?」

元上弦の陸はなんとも言えない妖しさがありますね!

そんな悪魔との契約のような裏のある美味しい話を目の前にして
不気味に笑う妓夫太郎。

「幸せそうな他人を許さない、必ず奪って取り立てる妓夫太郎になる」

鬼として生きていく、これは兄妹の物語――…

妓夫太郎が主人公で短編が描けそうなくらいの過去回想は後編へと続きます。
これだけの密度の話を前後編2話だけでまとめるのが鬼滅の刃ですね。
冗長なのでスピード感があって展開の落差がとてもワクワクします。


【感想】

「俺は何度生まれ変わっても必ず鬼になる」

タイトルの「何度生まれ変わっても」がここにかかっていると思うのですが
「そこ!?」という感じでした。

なんとなく、何度生まれ変わってもお前の兄ちゃんとして守ってやるみたいな
展開だと思っていたので……。
それとも来週はそういう描写を入れて今回のはミスリードみたいな感じにしてくるのでしょうか。
そんなことされたら泣きます。

思えば梅は生きたまま焼かれ、鬼となってからは心の成長が止まっていたのかもしれませんね。
前回の感想でもちょこっと触れましたが、遊郭の鬼兄妹が結構好きなんです。
生い立ちを知ってさらに好きになりました。

過去回を振り返っていたんですが、禰豆子に灼かれた時に
生きたまま焼かれた時の記憶がフラッシュバックしてるっぽいのを見つけて
今回の遊郭編は描写が細かいなと思いました。
火傷が治らないことがもの凄く癪に障ってるのも過去の記憶からだったり?(参照)
「アタシを灼いた奴らも殺してよ絶対」というのも過去の記憶から
灼かれたことだけは許せないという思いがあったのかもしれません。

取り立てに対する妓夫太郎の拘りなんかもそんな感じですよね。
とにかく一方的に奪われるのだけは許せない、
苦労もせずにのうのうと生きてきたやつは許せない、平等じゃない。
だから取り立てる、平等にするために幸せを取り立てる。

「やられた分は必ず取り立てる」
「自分が不幸だった分は幸せなやつから取り立てねぇと取り返せねえ」
「それが俺たちの生き方だからなあ言い掛かりをつけてくる皆殺してきたんだよなあ」

正直逆恨みだし無関係の人からまで取り立てるなとは思いますが
生まれた時から奪われ続け、誰からも愛情をもらってこなかったからこその悲劇なのかもしれません。

少なくとも、兄妹の絆だけは誰からも奪われない掛け替えのないものであって欲しい……。
後編ではなんとか兄妹にとっての終着点に辿りついて欲しいです。

妓夫太郎はどこか炭治郎と通じるところがあると思ってます。
ただ、全てのことが炭治郎とは反対だったというだけで、
ひとつ違えば炭治郎が妓夫太郎になっていたかもしれない状況だと思います。(参照)(参照)

もし、母親から愛情をもらっていなかったら。
もし、助けに来たのが冨岡義勇さんでは無かったら。

妓夫太郎がどのように消えていくのか気になります。

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